コロンビア大学人文学部教授ガヤトリ・チャクラヴォルティ・スピヴァク氏の講演会を一橋大学大学院言語社会研究科および社会学研究科共同主催の形で行います。
ガヤトリ・チャクラヴォルティ・スピヴァクさんは過去四半世紀にわたり、人文=社会科学の既成の方法論を根底から揺るがす、世界的な知的震源地であり続けてきました。フランスの哲学者ジャック・デリダの主著『グラマトロジーについて』の英訳者、その卓抜な序論の著者として一躍世界にその名を知られることになったスピヴァクさんは、その後、フェミニズム、第三世界論、マルクス主義、歴史学、比較文学、哲学など、いくつもの領域を横断しながら、誰よりも果敢で大胆な学問的介入を実践してきました。
西洋フェミニズムを非西洋女性の立場から批判してその尖鋭な潜在性を引き出すとともに、第三世界のポスト植民地国家の欺瞞性を社会の底辺に釘付けにされた女性の立場から照らし出すことで、スピヴァクさんは、オクシデント対オリエントという旧来の対立を超える独自の立場を創出してきました。
また、『資本論』を脱構築的に読み替えてジェンダー化された国際分業体制の分析を進めるとともに、語る可能性を奪われた人々=「サバルタン」の位置から歴史記述の主体の構造を問い直すことで、世界観、歴史観のラディカルな刷新に貢献してきました。
そして、文学テクストの類いまれな繊細な読み手として、世界文学史上の古典と、20世紀の「南」の文学の諸作品の比較論的考察を通して、これまで理論の言葉で語られたことのなかった「惑星思考」を導き出してきました。
スピヴァクさんは今、西ベンガルの農村における教育実践への参加を経て、いくつもの文化的、階級的断層が走るこの世界における、教育の可能性に関する透徹した省察に裏打ちされた、新しい人文学の発明を提唱しています。グローバル化と大学教育の危機が進行するなか、時代のアポリアと格闘し続けるアジアの知性の言葉に、私たちは今こそ耳を傾けるべき時でしょう。
以下、日程を抄録します。
7月7日(土)「人文学における学問的アクティヴィズム」@一橋大学
7月10日(火)「比較文学再考」@佐眞真美術館(沖縄県宜野湾市)
7月14日(土)非公開研究者会議「ガヤトリ・C・スピヴァクとの対話」@お茶の水女子大学
7月18日(水)「他のアジア」@国際文化会館岩崎小弥太記念ホール
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